アスベスト事前調査とは?
対象工事・流れ・資格・報告をわかりやすく解説
この記事は、解体・リフォーム工事を請け負う元請業者や工事を発注する方に向けて、「アスベスト(石綿)事前調査で何をすればよいか」に答えます。対象となる工事、義務を負う人、調査の流れ、資格・報告・罰則の要点が一記事で分かります。資格・報告・見分け方・法改正の詳細は、各章から専門記事へご案内します。
この記事のポイント
- 事前調査は規模・金額にかかわらず、建材を壊す解体・改修工事で原則必要(02)
- 調査の義務を負うのは元請業者(または自主施工者)。発注者には協力が求められる(03)
- 建築物は2023年10月から、一部の工作物は2026年1月から有資格者が調査する(06)
- 一定規模以上の工事は石綿の有無にかかわらず行政報告が必要(07)
Contents目次
01アスベスト事前調査の定義と目的
結論解体・改修工事の前に、壊す部分に石綿を含む建材があるかを調べる法定の調査です。
アスベスト事前調査とは、解体・改修工事の前に、工事の対象部分に石綿を含む建材が使われているかを調べることです。大気汚染防止法と石綿障害予防規則(以下、石綿則)が、この調査を義務づけています。
調査が求められる理由は、石綿が「壊したとき」に危険になるからです。石綿は建材の中に固まっている間は問題になりにくい一方で、解体や切断で壊すと繊維が飛散します。その繊維を吸い込むと、長い潜伏期間を経て中皮腫や肺がんなどの原因になります。
しかも石綿は、かつて吹付け材から床タイル・仕上塗材まで幅広い建材に使われました。そのため、工事の前に「どこに・どの建材に石綿があるか」を把握し、飛散を防ぐ作業方法を決める必要があります。
02事前調査が必要な工事と不要な作業
結論建材を壊す解体・改修工事なら、規模や金額にかかわらず原則として事前調査が必要です。
対象は建築物・工作物・鋼製の船舶の解体・改修工事です。石綿の危険は建材を壊すことで生じるため、工事の大きさではなく「建材を壊すかどうか」で要否が決まります。
ここで混同しやすいのが、「事前調査が必要か」と「行政への報告が必要か」は別の基準だという点です。
数万円の小さな改修でも、壁に穴をあける・床をはがすなど建材を壊す工事なら対象です。
事前調査が不要とされる作業の例
石綿を含む建材を壊すおそれがない、ごく軽微な作業は事前調査の対象外です。国の資料は、次の3種類を例に挙げています。
- 木材・金属・石・ガラスだけでできたもの、畳、電球など、石綿が含まれていないことが明らかなものを、周囲の材料を傷つけずに取り外す作業
- 釘を抜く・打つなど、材料にほとんど損傷を与えない作業
- 既存の塗装の上から塗り重ねるなど、今ある材料を除去せず新しい材料を加えるだけの作業
「2006年9月以降の建物だから不要」ではありません
2006年9月1日以降は、石綿を0.1%を超えて含む製品の製造・使用等が原則禁止されています。そのため、新築工事の着工日が2006年9月1日以降であることを設計図書などで確認できれば、その確認をもって事前調査とできます。
ただし、これは「調査の方法」であって「調査の免除」ではありません。元請業者は確認の記録を残し、報告対象の工事なら行政報告も行います。
03調査義務を負う人と関係者の役割
結論事前調査の義務を負うのは元請業者(自主施工者)です。発注者には情報提供などの協力が求められます。
事前調査の義務は、工事の元請業者が負います。自ら工事を行う自主施工者も同じ義務を負うため、以下では両者をまとめて「元請業者」と呼びます。各役割の具体的な手続きは04と07で説明します。
| 立場 | 主な役割 |
|---|---|
| 元請業者 (自主施工者) | 事前調査の実施、調査結果の記録・保存、発注者への書面での説明、現場への掲示、対象工事の行政報告 |
| 発注者(施主) | 設計図書など建材に関する情報の提供、調査に必要な費用や工期への配慮(努力義務) |
| 下請業者 | 元請業者の調査結果と作業計画に沿って、飛散防止措置を守って作業する |
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04事前調査の流れ(7ステップ)
結論書面調査で候補を絞り、目視調査で実物を確かめ、建材ごとに石綿の有無を判定します。
事前調査は、図面などで当たりをつける書面調査と、現地で実物を確かめる目視調査を組み合わせて進めます。図面だけでは改修による建材の変更を見落とし、現地だけでは施工年や製品名が分からないためです。
-
情報を集める元請業者・発注者
元請業者は、発注者から設計図書・竣工図・改修履歴・過去の調査結果などを受け取ります。新築工事の着工日もここで確認します。
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書面調査調査者
調査者は図面の仕上表や仕様書から建材・製品名・施工年を洗い出し、石綿を含む可能性がある建材の候補をリストにします。
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現地での目視調査調査者
調査者は、図面どおりに施工されているか、改修で建材が変わっていないかを現地で確かめます。製品の裏面の印字(メーカー名・商品名・不燃認定番号など)も確認し、写真で記録します。
-
石綿の有無を判定調査者
調査者は製品情報や国のデータベースと照合し、建材ごとに「石綿あり」「石綿なし」を判断します。根拠がそろわない建材は、手順5に進みます。
-
分析、または石綿ありとみなす調査者・分析機関
分析するか、石綿を含むとみなすかを選びます。選び方は05で説明します。
-
結果を記録・保存元請業者
元請業者は、調査の方法・結果・調査者などを記録し、3年間保存します。記録の写しは工事現場にも備え付けます。
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報告・説明・掲示元請業者
元請業者は、工事を始める前に調査結果を関係者へ伝えます。具体的な手続きは07で説明します。
建材は「層」ごとに確認する
1か所には複数の材料が重なっています。たとえば床は「床タイル → 接着剤 → 下地」、外壁は「仕上塗材 → 下地調整材 → ボード」です。表面の1枚だけで判断せず、壊す範囲に含まれる層をすべて確認することが見落としを防ぎます。
見分け方の詳細はアスベストの見分け方で解説しています。
05判断できない建材の扱い(分析とみなし判定)
結論書面と目視で判断できない建材は、分析で確かめるか、石綿を含むものとみなして扱います。
根拠がないまま「石綿なし」と扱うことはできません。2つの方法の違いは次のとおりです。
| 分析で確認する | 石綿ありとみなす | |
|---|---|---|
| 進め方 | 建材の一部を採取し、分析機関で石綿の有無を調べる | 分析をせず、石綿を含む建材として扱う |
| 費用・時間 | 分析費用と、結果が出るまでの日数がかかる | 分析の費用・日数はかからない |
| 工事への影響 | 「なし」なら通常の工事で進められる | 石綿ありと同じ飛散防止措置・届出・報告が必要になり、除去や処分の費用が増えることがある |
| 向いている場面 | 面積が大きい、除去費用への影響が大きい建材 | 面積がごく小さい、分析を待つ時間がない建材 |
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みなし判定は「手続きが軽くなる」わけではない
みなし判定で省略できるのは分析だけです。作業の方法・届出・報告は「石綿あり」と同じ扱いになります。広い面積の建材をみなしにすると工事費がかえってふくらむため、費用と工期を比べて選んでください。
06事前調査を行う人に必要な資格
結論建築物は2023年10月1日以降、一部の工作物は2026年1月1日以降に着工する工事で、有資格者が調査します。
事前調査は、誰でも行えるわけではありません。建築物は建築物石綿含有建材調査者など、工作物は工作物石綿事前調査者などの有資格者が行います。資格と調査できる範囲は次のとおりです。
| 資格 | 調査できる範囲 |
|---|---|
| 特定建築物石綿含有建材調査者 | すべての建築物 |
| 一般建築物石綿含有建材調査者 | すべての建築物 |
| 一戸建て等石綿含有建材調査者 | 一戸建て住宅と、共同住宅の住戸の内部 |
| 工作物石綿事前調査者 | 特定工作物(ボイラー・配管設備・発電設備などの設備系は、この資格者だけが調査できる。煙突・遮音壁などは一般・特定建築物石綿含有建材調査者も調査できる) |
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ただし、一戸建て等石綿含有建材調査者は調査できる範囲が限られます。受講要件や、建築物と工作物の区分けはアスベスト事前調査に必要な資格で解説しています。
07調査後の報告・説明・掲示
結論一定規模以上の工事は着工前に行政へ報告します。発注者への説明と現場の掲示は、すべての工事で必要です。
一定規模以上の工事は行政へ報告
次のいずれかに当てはまる工事では、元請業者が石綿の有無にかかわらず、工事を始める前に調査結果を報告します。報告先は労働基準監督署と都道府県等です。
報告は、原則として国の「石綿事前調査結果報告システム」から電子で行います。このシステムでは、1回の入力で労働基準監督署と都道府県等の両方に報告できます。報告の方法や入力内容はアスベスト事前調査結果の報告で解説しています。
発注者への説明と現場への掲示
報告の対象かどうかにかかわらず、元請業者は工事を始める前に次の2つを行います。記録の保存と現場への備え付けは、04の手順6で説明したとおりです。
- 調査結果を発注者に書面で説明する
- 調査結果を工事現場の見やすい場所に掲示する
石綿ありの場合は、さらに届出と作業計画
吹付け石綿や、石綿を含む保温材・断熱材・耐火被覆材(いわゆるレベル1・2)を除去する場合は、工事の前に届出が必要です。都道府県等への届出(特定粉じん排出等作業実施届出)は発注者または自主施工者が、労働基準監督署への届出は施工する事業者が行います。詳しくは「報告」と「届出」の違いで解説しています。
さらに、どの建材でも、石綿ありの建材を扱うときは作業計画を作り、飛散防止措置をとったうえで作業します。
08調査の費用と期間の決まり方
結論費用と期間は建物の規模・図面の有無・分析する検体数で決まります。分析を減らすことが両方を抑える近道です。
事前調査の費用は、次の条件によって大きく変わります。
- 建物の規模・構造
- 図面がそろっているか
- 現地で確認する部屋や部位の数
- 分析する検体の数
このうち分析の結果待ちは、工期にも直結します。そのため、図面が残っている建物では書面調査で候補を早めに絞り込み、分析する建材を最小限にすることが有効です。
見積もりを比べるときは、次の点を確認してください。
- 書面調査・現地調査・報告書作成のどこまでが見積もりに含まれているか
- 分析が必要になった場合の1検体あたりの費用と、想定している検体数
- 分析結果が出るまでの日数(工期に間に合うか)
- 行政報告の代行や、発注者向けの説明書面の作成が含まれるか
09事前調査を怠った場合の罰則
結論事前調査をせずに作業したり、調査結果を報告しなかったりすると、刑事罰の対象になります。
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 事前調査を行わずに解体・改修の作業を行った | 労働安全衛生法(石綿障害予防規則) | 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 調査結果を報告しなかった・虚偽の報告をした | 大気汚染防止法 | 30万円以下の罰金 |
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※2025年6月の刑法改正により、懲役は「拘禁刑」に改められています。このほか、飛散防止措置の違反に対する命令や罰則もあります。
10まとめ
- 建材を壊す解体・改修工事では、規模にかかわらず原則として事前調査が必要
- 義務を負うのは元請業者。発注者は協力する
- 書面調査と目視調査で判定し、判断できない建材は分析かみなし
- 建築物は2023年10月から、一部の工作物は2026年1月から有資格者が調査
- 一定規模以上は着工前に行政報告。説明と掲示はすべての工事で必要
- 分析対象を絞ることが費用と期間を抑える鍵。怠れば刑事罰の対象
法改正の経緯をまとめて確認したい方はアスベスト法改正のまとめもあわせてご覧ください。
Q&Aよくある質問
釘を打つ作業と、壁に穴をあける作業で扱いは違いますか?
違います。釘を抜く・打つなど、材料にほとんど損傷を与えない作業は、事前調査が不要な作業の例とされています。一方で、壁に穴をあける・床をはがすなど建材を壊す作業は、規模が小さくても事前調査の対象です。
塗装の塗り替え工事にも事前調査は必要ですか?
既存の塗装の上から塗り重ねるだけなら、事前調査が不要な作業の例に当たります。ただし、既存の塗装を削る・はがすなど、今ある材料を除去する作業を伴う場合はこの例に当たらないため、事前調査が必要です。
行政報告が不要な小さな工事なら、調査結果は誰にも伝えなくてよいですか?
いいえ。行政報告が不要な工事でも、元請業者は調査結果を記録して3年間保存し、発注者に書面で説明し、工事現場に掲示する必要があります。報告の要否は、これらの手続きの要否とは別です。
石綿がなかった場合も報告は必要ですか?
報告対象の工事であれば、石綿の有無にかかわらず報告が必要です。「石綿なし」という調査結果も報告します。
参考資料
本記事は2026年9月時点の法令・公表資料をもとに作成しています。自治体によっては条例で独自の基準や手続きを定めている場合があります。実際の工事にあたっては、所管の労働基準監督署・自治体の最新情報をご確認ください。


