株式会社AMO

Column

実務ガイド 読了目安 約10分

アスベストの見分け方
図面・年代・製品表示・現地確認の4ステップ

この記事は、解体・改修の前に「この建材にアスベスト(石綿)は含まれているか」を確かめたい現場担当者や発注者に向けたものです。石綿含有建材は見た目では判定できないため、着工日・図面・製品表示・現地確認の4ステップで製品を特定して見分けます。読み終えると、各ステップで何を確認するか、判断できない建材をどう扱うかが分かります。

アスベストの見分け方 4ステップ|図面・年代・製品表示・現地確認で絞り込む

この記事のポイント

  • 石綿含有建材は見た目では判定できない。書類と現物から製品を特定して判断する
  • 見分け方は着工日 → 図面・仕様書 → 製品表示とデータベース照合 → 現地確認の4ステップ
  • aマークがない・データベースに載っていない=石綿なし、ではない
  • 4ステップで判断できない建材は分析するか、石綿ありとみなす
Contents目次
  1. 見た目で判定できない理由
  2. 部位別の代表的な石綿含有建材とレベル区分
  3. 見分け方の4ステップの全体像
  4. STEP1 新築工事の着工日による絞り込み
  5. STEP2 図面・仕様書・改修履歴からの候補の洗い出し
  6. STEP3 製品表示の読み取りとデータベース照合
  7. STEP4 現地での層ごとの確認と写真記録
  8. 4ステップで判断できない建材の扱い(分析・みなし)
  9. まとめ
  10. よくある質問

01見た目で判定できない理由

結論石綿含有建材は見た目では判定できません。書類と現物から製品を特定し、その製品の情報で判断します。

石綿は建材の中に混ぜ込まれていることが多く、外観には表れません。そのため、同じ色・形・質感の建材でも、石綿を含むものと含まないものがあります。

たとえば天井や梁の吹付け材は、石綿を含むものと含まないものの外観がよく似ています。床タイルやスレート板も同様です。つまり、「古そうだから入っている」「新しく見えるから入っていない」という判断には根拠がありません。

そこで実務では、書類と現物の両方から「製品を特定する」方法をとります。製品が特定できれば、その製品が石綿を含んでいたかを、メーカー資料や国のデータベースで確かめられるからです。

確認のために割る・削る・剥がすのはNG

石綿を含む建材は、壊したときに繊維が飛散するおそれがあります。そのため、建物の所有者や一般の方は、中身を確かめる目的で建材を割る・削る・剥がすことを避けてください。分析のための試料は、調査者が飛散を防ぐ措置をとったうえで採取します。

解体・改修の前は、有資格者による事前調査が義務

この記事の見分け方は、解体・改修工事の前に行う「事前調査」の考え方に沿っています。建築物の事前調査は、2023年10月1日以降に着工する工事から、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が行う必要があります。調査の全体像はアスベスト事前調査とは、資格の詳細はアスベスト事前調査に必要な資格をご覧ください。

02部位別の代表的な石綿含有建材とレベル区分

結論石綿を含む製品があった建材は、屋根から設備・鉄骨まで広くあります。飛散のしやすさでレベル1〜3に分かれます。

部位ごとの代表的な建材を先に知っておくと、図面や現地で候補を拾うときの見落としが減ります。下の表は、石綿を含む製品があった建材の代表例です。

部位代表的な建材レベル
屋根住宅屋根用化粧スレート、スレート波板、ルーフィングレベル3
外壁窯業系サイディング、押出成形セメント板、スレートボード、仕上塗材・下地調整材レベル3
内装
(天井・壁)
ロックウール吸音天井板、けい酸カルシウム板第1種、パルプセメント板、せっこうボード(一部の製品)、スレートボードレベル3
床ビニル床タイル、ビニル床シート、接着剤レベル3
設備配管・ボイラーなどの保温材レベル2
鉄骨・天井・梁吹付け材レベル1
鉄骨耐火被覆材レベル2

表は横にスクロールできます

※耐火被覆でも、吹き付けて施工されたものは吹付け材(レベル1)として扱います。

レベル1・2・3の違い

石綿含有建材は、壊したときの飛散のしやすさ(発じん性)によって3つのレベルに分けて扱われます。レベルによって、工事前の届出や作業の方法が変わります。

レベル1 吹付け石綿など

発じん性が著しく高い。天井・梁・鉄骨などに吹き付けられた材料。除去などの前に届出が必要です。

レベル2 保温材・断熱材・耐火被覆材

石綿を含む保温材・断熱材・耐火被覆材。除去などの前に届出が必要です。

レベル3 成形板・床タイル・仕上塗材など

上記以外の石綿含有建材。届出は不要ですが、事前調査・報告・作業基準は適用されます。

レベル3の建材は種類が多く、屋根・外壁・内装・床のどこにでも使われている可能性があります。2021年4月1日からは、レベル3を含むすべての石綿含有建材が規制の対象です。法改正の流れはアスベスト法改正まとめで年表にしています。

表の建材=石綿あり、ではない

表に挙げた建材が、すべて石綿を含むわけではありません。同じ種類の建材でも、製品によって含む・含まないが分かれます。そのため、表は「候補を拾うためのリスト」として使い、有無は製品単位で判断します。

03見分け方の4ステップの全体像

結論「年代 → 書類 → 製品表示 → 現地」の順に手がかりを積み上げ、候補の建材を製品単位で特定します。

この順序で進める理由は、前のステップで候補を絞るほど、後のステップが速く正確になるためです。各ステップの成果が、次のステップの入力になります。

  1. 新築工事の着工日で当たりをつける年代

    成果:STEP2以降に進む必要があるかどうかの判断

  2. 図面・仕様書・改修履歴から候補を拾う書類

    成果:「部屋 × 部位 × 層」で書き出した候補リスト

  3. 製品表示を読み、データベースと照合する製品

    成果:候補ごとの製品名と、石綿含有の有無の根拠

  4. 現地で層ごとに確かめ、写真で残す現地

    成果:図面との違いや補修の混在を反映した判断結果と、記録写真

ただし、4ステップを経ても製品を特定できない建材は残ります。その場合は、08で説明する「分析」か「みなし」で結論を出します。

04STEP1 新築工事の着工日による絞り込み

結論着工日が2006年9月1日以降と書類で確認できれば、その確認をもって事前調査とできます。より前ならSTEP2へ進みます。

基準が2006年9月1日なのは、この日から、石綿を0.1重量%を超えて含む製品の製造・輸入・使用などが原則として禁止されたためです。つまり、この日以降に着工した建物では、石綿含有建材を新たに使うことが原則としてできません。

具体的には、次の2つの問いで判断します。

Q1
新築工事の着工日を、設計図書などの書類で確認できる?確認できない → STEP2以降へ(着工日が不明なら、石綿を含む可能性がある前提で調べる)
Q2
着工日は2006年9月1日以降?以降 → 着工日の確認をもって事前調査とできる(記録を残す)/より前 → STEP2以降へ

「完成年」で判断しない/確認で済んでも免除ではない

  • 見るべきは完成年や築年数ではなく、新築工事の着工日です。
  • 着工日の確認で済む場合も、調査の免除ではありません。確認した記録を保存し、報告対象の工事であれば行政への報告も必要です(アスベスト事前調査結果の報告)。

05STEP2 図面・仕様書・改修履歴からの候補の洗い出し

結論仕上表などの書類から、石綿を含む可能性がある建材を「部屋 × 部位 × 層」の候補リストに書き出します。

どこに何の建材が使われたかは、新築時の図面と改修の記録に残っています。そのため、現地へ行く前に書類から候補を書き出しておけば、STEP4で照らし合わせる対象がはっきりします。この書類での確認を書面調査といいます。

集めたい書類と、そこから分かること

書類分かること
仕上表
(内部・外部)
部屋ごとの床・幅木・壁・天井の仕上げ材、屋根・外壁の仕上げ材。候補を拾う起点になる
特記仕様書使う材料の種類・製品名・メーカー・規格などの指定。仕上表の略称を具体的な製品に結びつける手がかり
矩計図・断面詳細図屋根・外壁・床が何層で構成されているか。表面の下にある下地材や断熱材の見落としを防ぐ
構造図鉄骨の耐火被覆の有無や種類
設備図配管・ダクト・ボイラーまわりの保温材など
改修履歴・
過去の調査結果
改修で仕上げが変わった部屋、過去に分析・除去済みの箇所。新築時の図面だけでは分からない部分を補う

表は横にスクロールできます

仕上表の読み方

仕上表は、部屋名を縦に、床・幅木・壁・天井などの部位を横に並べた一覧表です。「部屋 × 部位」のマスを1つずつ見て、02の表にある建材名が書かれていないかを拾います。読むときは次の4点に注意します。

  • 建材名は略称で書かれていることが多い(例:せっこうボード=PB、けい酸カルシウム板=ケイカル板、ロックウール吸音天井板=岩綿吸音板)。略称と正式名称を対応させながら読む
  • 「床:ビニル床タイル 接着剤張り」のように仕上げ材と張り付け方が一緒に書かれている場合は、接着剤や下地も候補に入れる
  • 「同上」「〃」や、特記仕様書を参照させる記号があれば、参照先まで追いかける
  • 壁や天井に「下地」が別に書かれていれば、表面の仕上げと下地を別々の候補として扱う

拾った候補は、「101号室・天井・岩綿吸音板(下地せっこうボード)」のように場所・部位・層を分けて書き出します。この形にしておくと、STEP4の現地確認で1件ずつ照らし合わせられます。

図面が残っていない建物の場合

図面が残っていない建物では、書面調査で得られる情報が少なくなります。そのぶん、現地確認の比重が大きくなります。

06STEP3 製品表示の読み取りとデータベース照合

結論裏面・小口の印字から製品を特定し、データベースで石綿含有の有無と製造期間を照合します。

01で説明したとおり、製品が特定できれば石綿含有の有無を資料で確かめられます。そして、図面に製品名が書かれていない場合でも、現物の表示から製品を特定できることがあります。

裏面・小口の印字で見る項目

成形板などの建材には、裏面や小口(板の側面)にメーカー名などが印字されていることがあります。点検口から見える天井材の裏面や、取り外せる部材の裏側で確認します。

  • メーカー名・商品名:データベースやメーカー資料を引く一番の手がかり
  • 不燃認定番号:製品を絞り込むのに役立つ
  • JIS番号:製品の規格・種類の手がかりになる
  • ロット番号:製造時期を推定する手がかりになる

国のデータベースで照合する

製品名が分かったら、国土交通省・経済産業省の石綿(アスベスト)含有建材データベース(以下、データベース)で、その製品が石綿を含んでいたか、いつからいつまで製造されていたかを照合します。

ただし、同じ商品名でも製造時期によって扱いが変わりえます。そのため、製造期間と、ロット番号や施工時期をあわせて見る必要があります。データベースのほか、メーカーの資料や問い合わせ窓口でも確認できます。

「aマークがない=石綿なし」ではない

aマークは、1989年7月以降に業界が自主的に始めた「石綿を含む」ことを示す表示です。ただし、表示の基準になった含有率は当時のもので、現在の規制基準(0.1重量%超)とは異なります。そのため、aマークがないことは石綿を含まない根拠になりません。

「データベースに載っていない=石綿なし」ではない

データベースは、過去に製造されたすべての建材を網羅しているわけではありません。つまり、載っていない製品は「石綿なし」ではなく「データベースでは判断できない」ものです。メーカーの証明などの別の根拠が得られなければ、08の分析かみなしに進みます。

07STEP4 現地での層ごとの確認と写真記録

結論候補リストを持って現地で実物を層ごとに確かめ、補修による混在は分けて判断し、写真で記録します。

現地確認が必要なのは、図面は新築時の予定であり、実際の施工やその後の改修で変わっていることがあるためです。そのため、STEP2の候補リストを実物と1件ずつ突き合わせます。この現地での確認を目視調査といいます。

建材は「層」で重なっている

床・外壁・屋根は、1枚の材料ではなく複数の層でできています。そのため、表面の1枚だけで判断せず、工事で壊す範囲に含まれる層をすべて確認します。

床 タイル → 接着剤 → 下地

床タイルや床シートだけでなく、それを貼っている接着剤や下地も確認の対象です。

外壁 仕上塗材 → 下地調整材 → ボード

表面の塗装の下に、下地調整材やボードが重なっています。それぞれ別に判断します。

屋根 屋根材 → ルーフィング → 下地

屋根材の下にあるルーフィング(防水シート)も候補になります。

部分補修による「混在」に注意

同じ部屋の同じ部位でも、改修や部分的な補修で、別の時期の別の製品が混ざっていることがあります。たとえば、床の一部だけタイルを張り替えたケースや、天井の一部だけボードを交換したケースです。現地では次の手順で確認します。

  • 色・柄・目地・割り付けが周囲と違う箇所がないかを見る
  • 違う箇所があれば、1つの部位でも別の建材として分けて判断する
  • 1か所の確認結果を、部屋全体や建物全体にそのまま広げない

写真で記録を残す

事前調査の記録は、3年間の保存と、写しの現場への備え付けが必要です。そのため、判断の根拠を後から説明できるよう、現地では次の写真を残します。

  • どの部屋・どの部位かが分かる全景の写真
  • 建材の表面の状態が分かる近景の写真
  • 裏面・小口の印字(メーカー名・商品名・認定番号など)が読める写真
  • 補修で別の製品が混ざっている箇所の、境目が分かる写真

084ステップで判断できない建材の扱い(分析・みなし)

結論製品を特定できない建材は、分析で確かめるか、分析せずに石綿を含むものとみなすかで結論を出します。

石綿の有無が分からないまま、「たぶん大丈夫」で工事を進めることはできません。そのため、判断できない建材には必ずどちらかの結論を出します。2つの方法の違いは次のとおりです。

分析で確認する石綿ありとみなす
進め方調査者が飛散防止措置をとって試料を採取し、分析する分析をせず、石綿を含む建材として扱う
分析する人所定の講習の修了者など(2023年10月以降)―
時間結果が出るまでの日数がかかる分析の日数はかからない
その後の扱い「なし」なら通常の工事で進められる作業方法・届出・報告は「石綿あり」と同じ

表は横にスクロールできます

分析の範囲はSTEP1〜4の精度で決まる

書面と現地で製品を特定できた建材が多いほど、分析やみなしに回す建材は減ります。逆に、層や補修の混在を見落とすと、分析する検体が足りなくなったり、あとから追加の調査が必要になったりします。分析とみなしの選び方はアスベスト事前調査とはでも解説しています。

09まとめ

アスベストの見分け方は、特別な目利きではなく、手がかりを順番に積み上げて製品を特定する作業です。

  • 01:石綿含有建材は見た目では判定できない。書類と現物から製品を特定して判断する
  • 02:石綿を含む製品があった建材は屋根から設備・鉄骨まで広く、レベル1〜3に分かれる
  • 03:「年代 → 書類 → 製品表示 → 現地」の4ステップで候補を絞り込む
  • STEP1:着工日が2006年9月1日以降と書類で確認できれば、その確認をもって事前調査とできる
  • STEP2:書類から「部屋 × 部位 × 層」の候補リストを作る
  • STEP3:印字から製品を特定し、データベースで照合する
  • STEP4:現地で層ごとに確かめ、混在を分けて判断し、写真で記録する
  • 08:それでも判断できない建材は、分析するか石綿ありとみなす

見分けた結果をどう報告するかはアスベスト事前調査結果の報告で解説しています。

Q&Aよくある質問

完成が2007年の建物なら、石綿の心配はありませんか?

いいえ。判断の基準は完成年ではなく、新築工事の着工日です。完成が2007年でも、着工が2006年9月1日より前であれば、石綿を含む建材が使われている可能性があるものとして通常どおり調査します。

図面や仕様書が残っていない建物は、どう見分けますか?

書面調査で得られる情報が少ないぶん、現地確認の比重が大きくなります。着工日を書類で確認できない場合は、石綿を含む可能性がある前提で調べます。現地で製品表示から製品を特定し、特定できない建材は分析するか、石綿を含むものとみなします。

同じ見た目の建材が並んでいれば、1か所の確認結果を全体に当てはめてよいですか?

いいえ。改修や部分的な補修で、同じ部位に別の時期の別の製品が混ざっていることがあります。色・柄・目地・割り付けが違う箇所は別の建材として判断し、1か所の結果を部屋全体や建物全体にそのまま広げないでください。

分析せずに「石綿あり」とみなせば、手続きは軽くなりますか?

いいえ。みなしで省けるのは分析の日数だけです。みなした建材は、作業方法・届出・報告のすべてを「石綿あり」と同じに扱います。一方で、分析で「なし」と確認できた建材は、通常の工事で進められます。

成形板などのレベル3は届出が不要なので、調べなくてもよいですか?

いいえ。レベル3の建材は工事前の届出こそ不要ですが、事前調査・報告・作業基準は適用されます。届出の要否と、調査の要否は別の問題です。

参考資料

本記事は2026年9月時点の法令・公表資料をもとに作成しています。自治体によっては条例で独自の基準や手続きを定めている場合があります。実際の工事にあたっては、所管の労働基準監督署・自治体の最新情報をご確認ください。

株式会社AMO 編集部アスベスト事前調査AIアプリ「Astro」の開発を通じて、解体・改修の現場で役立つ石綿調査の実務情報をお届けしています。