アスベスト事前調査に必要な資格とは?
建築物・工作物別に解説【2026年対応】
この記事は、解体・改修工事を請け負う事業者に向けて、アスベスト(石綿)の事前調査を誰が行えるのかを整理します。建築物は2023年10月から、一部の工作物は2026年1月から、有資格者による調査が義務になりました。読み終えると、自社の工事に必要な資格、その取り方、ほかの石綿関連資格との違いが分かります。
この記事のポイント
- 必要な資格は「建築物か工作物か」と「着工日」で決まる
- 建築物は特定・一般・一戸建て等の3資格。一戸建て等は戸建てと住戸の内部だけ
- ボイラー・配管などの設備系の特定工作物は工作物石綿事前調査者が調査する。建物の中の設備は「建築物」扱い
- 資格は登録講習機関の講習で取得する。石綿作業主任者は事前調査ができない
Contents目次
01必要な資格の決まり方
結論必要な資格は「建築物か工作物か」と「着工日」で決まります。下の3つの質問で、自分の工事に必要な資格を絞り込めます。
事前調査とは、解体・改修工事の前に、壊す部分に石綿を含む建材があるかを調べることです。大気汚染防止法(大防法)と石綿障害予防規則(石綿則)により、規模や請負金額にかかわらず原則として必要です。調査全体の流れはアスベスト事前調査とはで解説しています。
そのうえで、調査を「誰が行うか」は法改正で2段階に定められました。つまり、必要な資格は調査する対象と工事の着工日で決まり、会社の規模や工事の金額では決まりません。
この日以降に着工する建築物の解体・改修工事は、建築物石綿含有建材調査者などが事前調査を行います。
この日以降に着工する特定工作物の解体・改修工事は、工作物石綿事前調査者などが事前調査を行います。
どちらも工事の着工日で判断します。
3つの質問で必要な資格を判定する
自分が扱う工事にどの資格が必要かは、次の順に答えると絞り込めます。各資格の詳しい範囲は、建築物を02、工作物を03で説明します。
ただし、2006年9月1日以降に着工した建物は、着工日の確認で事前調査とできる場合があります。この扱いは04で説明します。
02建築物の調査に必要な3つの資格
結論建築物は特定・一般・一戸建て等の3資格で調査します。特定と一般はすべての建築物、一戸建て等は戸建てと住戸の内部だけが対象です。
3つの資格の違いは、調査できる建物の範囲と講習の中身にあります。特定と一般は調査できる範囲が同じで、講習の中身だけが異なります。
| 資格 | 調査できる範囲 | 講習の中身 |
|---|---|---|
| 特定建築物 石綿含有建材調査者 | すべての建築物 | 一般の講習内容+実地研修・口述試験 |
| 一般建築物 石綿含有建材調査者 | すべての建築物 | 建築物全般の調査に必要な知識を学ぶ講習 |
| 一戸建て等 石綿含有建材調査者 | 一戸建て住宅、共同住宅の住戸の内部(専有部分)に限る | 戸建て住宅等の調査に対象を絞った講習 |
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一戸建て等の資格で調査できない場所
一戸建て等石綿含有建材調査者は、範囲が限られている分、線引きを誤りやすい資格です。特に、マンションの共用部分は「住戸の内部」に当たりません。
大規模修繕や共用部の改修は一般・特定が必要
廊下・階段・エントランス・外壁・屋上などの共用部分は、一戸建て等の資格だけでは調査できません。そのため、マンションの外壁塗装や共用廊下の床改修は、一般または特定建築物石綿含有建材調査者が調査します。
経過措置:日本アスベスト調査診断協会の登録者
3資格のほか、2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された人も、建築物の事前調査を行えます。社内に登録者がいる会社は、登録の有無を確認しておくと人員計画を立てやすくなります。
03工作物の調査に必要な資格(2026年1月〜)
結論ボイラーや配管などの設備系の特定工作物は、工作物石綿事前調査者でなければ調査できません。煙突や遮音壁などは建築物の資格でも調査できます。
ここでいう工作物とは、プラントの設備や煙突、遮音壁のように、建築物ではない構造物や設備のことです。01で説明したとおり、2026年1月1日以降に着工する特定工作物は有資格者が調査します。
特定工作物は、どの資格者が調査できるかによって次の2つのグループに分かれます。
| グループ | 対象となる特定工作物 | 調査できる人 |
|---|---|---|
| A:設備系 (10種) | 反応槽/加熱炉/ボイラー・圧力容器/配管設備(建築物に設ける給水・排水・換気・暖房・冷房・排煙設備等を除く)/焼却設備/貯蔵設備(穀物用を除く)/発電設備(太陽光・風力を除く)/変電設備/配電設備/送電設備(ケーブルを含む) | 工作物石綿事前調査者 |
| B:その他 (7種) | 煙突/トンネルの天井板/プラットホームの上家/遮音壁/軽量盛土保護パネル/鉄道の駅の地下式構造部分の壁・天井板/観光用エレベーターの昇降路の囲い | 工作物石綿事前調査者 または 一般・特定建築物石綿含有建材調査者 |
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なお、一戸建て等石綿含有建材調査者は、どちらのグループも調査できません。
建物の中の設備は「建築物」扱い
ビルや工場の建物に設ける給排水・換気・冷暖房・排煙などの建築設備(配管を含む)は、工作物ではなく「建築物」として扱います。そのため、建物内の空調ダクトや給排水管の改修は、建築物石綿含有建材調査者などが調査します。工作物石綿事前調査者が必要になるのは、プラントの配管設備やボイラーなど、建築設備に当たらない設備です。
一方で、特定工作物に当たらない工作物でも、事前調査そのものは必要です。元請業者は、区分けに迷う場合、石綿総合情報ポータルサイトや所管の労働基準監督署で確認してから調査者を手配してください。
042006年9月1日以降に着工した建物の扱い
結論新築工事の着工日が2006年9月1日以降だと書類で確認できれば、その確認をもって事前調査とできます。確認できなければ有資格者が調査します。
2006年9月1日以降は、石綿を0.1重量%を超えて含む製品の製造・使用等が原則禁止されました。そのため、新築工事の着工日を設計図書などで確認すること自体が、事前調査の一つの方法として扱われます。つまり、事前調査が不要になるわけではありません。見分け方の考え方はアスベストの見分け方で解説しています。
確認に使った書類と結果を記録し、3年間保存します。報告対象の工事なら、行政への報告も必要です。
図面がない、着工日がはっきりしない場合は、有資格者が書面調査と目視調査を行います。
「新しい建物だから資格者はいらない」と決めつけない
基準は新築工事の着工日です。築年数の見た目や「完成年」では判断できません。報告の手順はアスベスト事前調査結果の報告をご覧ください。
05自社が取るべき資格の選び方
結論自社が普段扱う建物・設備のうち、最も広い範囲に合わせて資格を選びます。あわせて、資格者の人数と外部の依頼先も確保します。
範囲の狭い資格だけを持っていると、範囲外の依頼を受けたときに自社で調査できません。そのため、迷ったら扱う可能性のある一番広い範囲に合わせて選びます。
| 主な業態 | おすすめの資格 | 理由 |
|---|---|---|
| 戸建て・住戸内の リフォーム中心 | 一戸建て等石綿含有建材調査者 (将来を考えるなら一般) | 日常の工事はこの範囲に収まる。共用部や店舗の依頼を受ける可能性があるなら、最初から一般を取っておくと断らずに済む |
| ビル・店舗・工場も 扱う解体・改修 | 一般建築物石綿含有建材調査者 (難しい現場が多いなら特定) | すべての建築物に対応できる。煙突や遮音壁などの特定工作物も調査できる |
| プラント・設備工事 | 工作物石綿事前調査者 +一般建築物石綿含有建材調査者 | ボイラー・配管・発電設備などは工作物の資格が必須。工場の建屋や建物内設備も扱うなら建築物の資格も必要 |
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社内で何人そろえるか
事前調査は着工前に終える必要があります。そのため、資格者が1人だけだと、休みや繁忙期に工事が止まるおそれがあります。会社は現場数に合わせて、複数名の資格者をそろえるか、外部の調査会社と連携しておきましょう。
- 自社が扱う建物は、戸建て・住戸内だけか、共用部・店舗・工場も含むか
- プラント設備やボイラー、発電・変電設備の工事を受けることがあるか
- 同じ時期に並行する現場数に対して、資格者の人数は足りているか
- 資格者が不在のときに依頼できる外部の調査会社があるか
06資格の取り方と受講資格
結論登録講習機関の講習を修了すると資格を取得できます。国家試験はなく、受講資格は講習ごとに要項で確認します。
建築物・工作物の調査者の資格は、国に登録された講習機関(登録講習機関)で講習を受け、修了することで取得します。手順は次のとおりです。
-
取る資格を決める会社・本人
05を参考に、扱う建物・設備に合った資格を選びます。
-
受講資格を確認する本人
講習ごとに受講資格が決まっています。実務経験の年数やほかの講習の修了などが条件になるため、申し込む講習機関の要項で確認します。
-
登録講習機関に申し込む本人
日程・会場・受講方法は講習機関によって異なります。証明書類の準備に時間がかかることもあるため、早めに申し込みます。
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講習を受けて修了する講習機関
講義を受け、講習機関の定める修了の要件を満たすと修了となります。特定建築物石綿含有建材調査者は、実地研修と口述試験も受けます。
-
修了証明を保管し、調査記録に記載する会社・本人
事前調査の記録には調査者の情報を残します。修了を証明する書類は、すぐに提示できるよう保管しておきます。
受講資格の例(一般建築物石綿含有建材調査者講習)
一般建築物石綿含有建材調査者講習では、たとえば次の人が受講資格の対象とされています。
- 石綿作業主任者技能講習を修了した人
- 学歴の区分に応じた年数以上、建築の実務経験がある人(大学卒業後2年以上 など)
- 学歴にかかわらず、建築の実務経験が11年以上ある人
受講資格は必ず講習機関の要項で確認を
上記は一例で、ここに挙げていない条件もあります。対象となる学歴・実務経験の範囲や証明方法は講習によって異なります。一戸建て等・特定・工作物の各講習も含め、受講資格・講習の時間・受講料は、申し込む登録講習機関の要項で確認してください。
07石綿作業主任者・分析調査者との違い
結論事前調査ができるのは調査者の資格を持つ人だけです。分析調査者は建材の分析を、石綿作業主任者は除去作業の指揮を担います。
アスベストに関する資格は、「調べる」「分析する」「除去作業を指揮する」で役割が分かれています。そのため、ほかの石綿関連資格を持っていても、それだけでは事前調査を行えません。
| 資格 | 役割 | 事前調査はできる? |
|---|---|---|
| 建築物石綿含有建材調査者 (特定・一般・一戸建て等) | 建築物の事前調査(書面調査・目視調査・石綿の有無の判断) | できる(範囲は資格による) |
| 工作物石綿事前調査者 | 特定工作物の事前調査 | できる(工作物) |
| 分析調査者 (分析調査者講習の修了者等) | 採取した建材を分析し、石綿が含まれているかを調べる | 分析を担当する。書面・目視の事前調査は調査者の資格が必要 |
| 石綿作業主任者 (技能講習) | 石綿の除去などの作業を現場で指揮・管理する | できない |
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分析は、2023年10月以降、石綿則にもとづき分析調査者講習の修了者などが行うことになっています。そのため、書面と目視で判断できない建材を分析に回すときは、依頼先の分析機関にこの要件を満たす人がいるかを確認しておきましょう。
石綿作業主任者から調査者へのステップアップ
石綿作業主任者は事前調査を行えません。ただし、06で挙げたとおり、石綿作業主任者技能講習の修了は一般建築物石綿含有建材調査者講習の受講資格の一つです。つまり、除去工事を担ってきた人は、次の資格として調査者を目指せます。
08まとめ
- 必要な資格は「建築物か工作物か」と「着工日」で決まる(建築物は2023年10月1日、特定工作物は2026年1月1日以降の着工から有資格者が調査)
- 建築物は特定・一般・一戸建て等の3資格で調査する。一戸建て等は戸建てと住戸の内部に限る
- 設備系10種の特定工作物は工作物石綿事前調査者が調査する。建物に設ける給排水・空調などの設備は「建築物」扱い
- 2006年9月1日以降の着工を書類で確認できれば、その確認をもって事前調査とできる
- 資格は、自社が扱う最も広い範囲に合わせて選び、資格者の人数と外部の依頼先も確保する
- 資格は登録講習機関の講習を修了して取得する。受講資格は講習機関の要項で確認する
- 事前調査ができるのは調査者の資格を持つ人だけ。石綿作業主任者は除去作業を指揮する資格で、事前調査はできない
資格のルールがいつ、どう変わってきたかはアスベスト法改正のまとめで年表にしています。
Q&Aよくある質問
契約が2025年中でも、着工が2026年1月以降の工作物の工事は有資格者の調査が必要ですか?
必要です。有資格者による調査が必要かどうかは、契約日や調査日ではなく、工事の着工日で判断します。2026年1月1日以降に着工する特定工作物の解体・改修工事は、工作物石綿事前調査者などが事前調査を行います。
特定建築物石綿含有建材調査者のほうが、一般より調査できる範囲は広いですか?
広くありません。特定と一般は、どちらもすべての建築物を調査できます。違いは講習の中身で、特定は一般の講習内容に加えて実地研修と口述試験があります。
店舗併用住宅の店舗部分は、一戸建て等石綿含有建材調査者で調査できますか?
できません。一戸建て等石綿含有建材調査者が調査できるのは、一戸建て住宅と、共同住宅の住戸の内部(専有部分)に限られます。店舗部分は、一般または特定建築物石綿含有建材調査者が調査します。
太陽光発電設備や穀物用の貯蔵設備にも、工作物石綿事前調査者が必要ですか?
設備系の特定工作物からは除かれているため、工作物石綿事前調査者でなければならない対象には当たりません。ただし、特定工作物に当たらない工作物でも事前調査そのものは必要です。区分けに迷う場合は、石綿総合情報ポータルサイトや所管の労働基準監督署で確認してください。
資格者がいない会社は、どうすればよいですか?
社員が講習を受けて資格を取るか、資格者が在籍する調査会社に事前調査を依頼します。事前調査の義務を負うのは元請業者なので、外部に依頼する場合も、調査結果の記録保存・発注者への説明・掲示・行政報告は元請業者の責任で行います。
参考資料
- 建築物石綿含有建材調査者について(石綿総合情報ポータルサイト)
- 工作物石綿事前調査者について(石綿総合情報ポータルサイト)
- 石綿総合情報ポータルサイト(厚生労働省・環境省)
- 石綿障害予防規則など関係法令について(厚生労働省)
本記事は2026年9月時点の法令・公表資料をもとに作成しています。講習の受講資格・内容は登録講習機関ごとに定められています。自治体によっては条例で独自の基準や手続きを定めている場合があります。実際の工事にあたっては、所管の労働基準監督署・自治体の最新情報をご確認ください。


