アスベスト事前調査結果の報告とは?
対象工事・期限・報告方法を解説
解体・改修工事の担当者が「この工事は事前調査結果の報告が必要か」「必要なら誰が・いつ・どうやって報告するか」に迷わないための記事です。報告の対象になる4つの基準、報告者と期限、報告システムでの手順を順に説明します。あわせて、報告のあとに必要な手続きと、届出との違い・罰則まで分かります。
この記事のポイント
- 解体80㎡以上・改修100万円以上(税込)など4つの基準のどれかに当てはまれば、石綿の有無にかかわらず報告が必要
- 元請業者が工事に着手する前までに、報告システムで報告する。1回で労働基準監督署と都道府県等の両方に届く
- 報告のあとも、発注者への書面での説明・現場への掲示・記録の3年保存が必要。報告対象外の工事でもこれらは必要
- 報告と届出は別の手続き。報告を怠ると30万円以下の罰金の対象
Contents目次
01事前調査結果の報告とは何か?
結論一定規模以上の解体・改修工事で、事前調査の結果を着手前に行政へ知らせる手続きです。石綿がなくても報告します。
事前調査結果の報告(以下「報告」)とは、アスベスト(石綿)事前調査の結果を、労働基準監督署と都道府県等(自治体)に知らせる手続きです。2022年4月1日から、大気汚染防止法(大防法)と石綿障害予防規則(石綿則)で義務づけられています。
報告の目的は、行政が現場ごとに「調査がきちんと行われたか」を把握することです。そのため、石綿が見つかったかどうかに関係なく報告が必要です。「調べた結果、石綿はなかった」という工事も、基準に当てはまれば報告します。
事前調査との関係
報告は、事前調査が終わったあとに行う手続きです。事前調査は規模や金額にかかわらず、解体・改修工事で原則として必要です。つまり、「調査はすべての工事で必要」「報告はそのうち一定規模以上の工事で必要」という関係になります。
建材を壊す工事であれば、規模・金額にかかわらず原則として必要です。
基準は02で説明します。石綿の有無は問いません。
事前調査の全体像はアスベスト事前調査とはで解説しています。
02報告が必要な工事はどれか?
結論解体80㎡以上・改修100万円以上(税込)など、4つの基準のどれか1つに当てはまれば対象です。契約を分けても合算します。
報告の基準は、工事の種類ごとに「規模を何で測るか」が異なります。建築物の解体は解体する部分の床面積の合計で判断します。一方、建築物の改修と工作物の工事は請負金額、船舶は総トン数で判断します。
請負金額の考え方
請負金額は、材料費を含む工事全体の金額(税込)で判断します。アスベストに関係する部分だけを切り出した金額ではありません。具体的には、次の3点に注意します。
- 税抜で100万円未満でも、税込で100万円以上なら対象
- 石綿を含む建材を扱う作業が工事の一部だけでも、工事全体の請負金額で判断する
- 同じ事業者が一つの工事を複数の契約に分けて請け負っても、一つの契約とみなして合算する
契約を分けても報告は免れません
3点目は石綿則の定めです。たとえば、1階と2階の改修を別々の契約にしても、合計が100万円以上なら報告が必要です。
「特定の工作物」とは
報告が必要な工作物は、石綿が使われているおそれが高いとして国が定めたものです。この範囲は、工作物の事前調査に資格者が必要となる工作物と同じです。
| 区分 | 主な工作物 |
|---|---|
| 設備系 | 反応槽、加熱炉、ボイラー・圧力容器、配管設備(建築物に設ける給水・排水・換気・暖房・冷房・排煙設備等を除く)、焼却設備、貯蔵設備(穀物用を除く)、発電設備(太陽光・風力を除く)、変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む) |
| その他 | 煙突、トンネルの天井板、プラットホームの上家、遮音壁、軽量盛土保護パネル、鉄道の駅の地下式構造部分の壁・天井板、観光用エレベーターの昇降路の囲い |
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報告対象かどうかの判定フロー
迷ったときは、上から順に当てはめて確認してください。1つでも「はい」になれば報告の対象です。
03誰が・いつまでに・どこへ報告するのか?
結論元請業者が、工事に着手する前までに、労働基準監督署と都道府県等の両方へ報告します。
提出先が2か所あるのは、報告の根拠となる法令が2つあるためです。労働基準監督署へは石綿則、都道府県等へは大防法にもとづいて報告します。ただし、報告システムを使えば1回の報告で両方に届きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 工事の元請業者。発注者から請け負わずに自ら工事を行う場合は自主施工者 |
| いつまでに | 解体・改修の作業に着手する前まで |
| どこへ | 所轄の労働基準監督署(石綿則)と、都道府県等の自治体(大防法) |
| どうやって | 原則として報告システムから電子で報告(手順は04で説明) |
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下請業者が報告する必要はある?
下請業者が個別に報告する必要は、原則としてありません。石綿則では、請負契約が何層にも重なる場合、最も上位の注文者(元請業者)が作業の全部について報告すると定めています。つまり、工事の一部を下請に出していても、元請業者が工事全体をまとめて報告します。
「着手前」はいつまでが目安?
法令上の期限は「工事に着手する前」です。ただし、報告には事前調査の結果が必要で、分析を行う場合は結果が出るまでの日数もかかります。そのため、元請業者は工程表に調査・分析・報告の期間をあらかじめ組み込んでおくのが安全です。
一方で、レベル1・2の建材を除去する工事では、届出の「14日前」という期限のほうが先に来ます。届出の期限は07で説明します。
04報告システムではどう報告するのか?
結論GビズIDで報告システムにログインし、工事と調査結果を入力して提出します。件数が多ければ一括申請を使います。
報告は、厚生労働省の「石綿事前調査結果報告システム」(以下「報告システム」)で電子的に行います。そのため、書類を持って窓口に出向く必要はありません。ログインには、法人・個人事業主向けの共通認証であるGビズIDを使います。
GビズIDの種類
報告システムには、GビズIDエントリーとGビズIDプライムのどちらでもログインできます。プライムの組織で発行するメンバーIDでもログインできます。
| GビズIDエントリー | GビズIDプライム | |
|---|---|---|
| 発行方法 | メールアドレスで取得。即日発行も可能 | 印鑑証明書と申請書を郵送して発行 |
| 一括申請 | — | 利用できる |
| 向いている使い方 | 工事を1件ずつ報告する。すぐに報告を始めたい | 報告件数が多く、複数の工事をまとめて登録したい |
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プライムの取得は早めに
GビズIDプライムは郵送による手続きがあるため、発行までに日数がかかることがあります。報告件数が多い事業者は、報告の期限が迫る前に取得しておきましょう。
報告の手順
報告システムでの大まかな流れは次のとおりです。画面の操作方法は、報告システムのマニュアルで確認してください。
-
GビズIDを取得する元請業者
上の表を参考に、エントリーかプライムを取得します。
-
報告に必要な情報をそろえる元請業者・調査者
事前調査の記録、工事の概要(場所・期間・床面積や請負金額)、労働保険番号、調査者の資格を証明する書類を手元に用意します。
-
報告システムにログインする元請業者
石綿総合情報ポータルサイトの案内から報告システムに入り、GビズIDでログインします。
-
工事と事前調査の結果を入力する元請業者
元請業者と工事の情報に続いて、材料ごとの石綿の有無と判断根拠、作業の方法を入力します。
-
内容を確認して提出する元請業者
入力内容を見直して提出します。03で説明したとおり、提出した報告は労働基準監督署と都道府県等の両方に届きます。
主な入力項目
報告する内容は石綿則で決められています。主な項目は次のとおりです。事前調査の記録がきちんと作られていれば、ほとんどはそこから転記できます。
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 事業者の情報 | 事業者の名称・住所・電話番号、労働保険番号 |
| 工事の情報 | 作業場所の住所、工事の名称と概要、工事の実施期間、解体工事なら床面積の合計、改修工事なら請負金額 |
| 調査の情報 | 調査終了日、新築工事の着工日、建築物等の構造、調査を行った人の氏名と資格 |
| 調査の結果 | 材料ごとの石綿の有無(みなし判定の場合はその旨)と、「石綿なし」と判断した根拠 |
| 作業の情報 | 石綿を含む材料の切断等の作業の有無、粉じんの飛散を防ぐ方法、労働者のばく露を防ぐ方法、石綿作業主任者の氏名(該当作業がある場合) |
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※新築工事の着工日が2006年9月1日以降であることを設計図書等で確認して事前調査とした場合は、報告する項目は事業者・工事の基本情報などに限られます。
複数の工事は「一括申請」でまとめて登録
報告する工事が多い場合は、報告システムの一括申請を使います。国が用意したExcel形式の一括申請様式に複数の工事の内容を入力し、まとめて登録できます。一括申請を使う際は、次の3点に注意してください。
- 一括申請様式は、石綿総合情報ポータルサイトの報告システムの案内ページから入手できる
- 報告システムには外部から自動で送信するための仕組み(API)はなく、登録はシステム上で行う
- 2026年1月5日にCSVファイルの仕様が変更されており、独自のツールでCSVを作っている場合は改修が必要になることがある
05報告のあとに何をするのか?
結論発注者への書面での説明、現場への掲示、記録の3年保存が必要です。石綿があれば作業計画と届出に進みます。
報告は行政に知らせる手続きにすぎず、発注者や現場で働く人・近隣への情報共有は別に必要です。そのため、元請業者は報告を済ませたあとも、次の手続きを行います。
- 発注者へ書面で説明する:工事を始める前に、事前調査の結果を発注者(施主)に書面で説明します
- 現場に掲示する:調査終了日や、調査した部分と材料ごとの石綿の有無の概要を、工事現場の見やすい場所に掲示します
- 記録を3年間保存する:事前調査の記録を3年間保存し、その写しを工事現場に備え付けます
- 石綿ありなら作業計画・届出:石綿を含む建材(みなし判定を含む)を扱う場合は作業計画を作り、必要な届出(07で説明)と飛散防止措置を行います
報告の控えは調査記録と一緒に
報告した内容は、現場の掲示や発注者への説明と食い違わないようにしておく必要があります。そのため、報告の控えは事前調査の記録と一緒に保管しておくと、行政からの問い合わせや社内の確認にすぐ対応できます。
06報告対象外の工事では何が必要か?
結論不要になるのは報告だけです。事前調査・記録の保存・発注者への説明・現場への掲示は、工事の大小にかかわらず必要です。
報告の有無は、行政が把握する工事の範囲を決める線引きにすぎません。一方で、事前調査は石綿から作業者や近隣を守るためのものです。そのため、02の基準を下回る工事でも、報告以外の義務はそのまま残ります。
| 手続き | 報告対象の工事 | 報告対象外の工事 |
|---|---|---|
| 事前調査 | 必要 | 必要 |
| 調査記録の3年保存・現場備え付け | 必要 | 必要 |
| 発注者への書面での説明 | 必要 | 必要 |
| 現場への掲示 | 必要 | 必要 |
| 行政への報告 | 必要 | 不要 |
| 石綿ありの場合の作業基準・届出 | 必要 | 必要 |
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特に小さなリフォームでは、「報告がないなら調査もいらない」という誤解が起きがちです。建材の見分け方はアスベストの見分け方で解説しています。
07「報告」と「届出」はどう違うのか?
結論報告は調査結果を知らせる手続き、届出は石綿を含む建材の除去等の作業内容を知らせる手続きで、別物です。
名前は似ていますが、必要になる条件が違います。報告は工事の規模で決まり、石綿の有無は問いません。一方で届出は、石綿を含む建材を除去するなどの作業を行うときだけ必要です。
| 事前調査結果の報告 | 作業の届出 | |
|---|---|---|
| 何を知らせるか | 事前調査の結果 | 石綿を含む建材の除去等の作業内容 |
| 必要になる条件 | 工事の規模・金額(石綿の有無は問わない) | 石綿を含む建材の種類(主にレベル1・2) |
| 石綿なしの場合 | 必要(基準に当てはまれば) | 不要 |
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主な届出の種類
石綿を含む建材の除去等を行う場合の主な届出は、次の3つです。届出者・期限・提出先がそれぞれ異なります。
| 届出 | 主な対象 | 届出者 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|---|---|
| 特定粉じん排出等作業 実施届出 大防法 第18条の17 | レベル1(吹付け石綿)、レベル2(石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材)の除去等 | 発注者または 自主施工者 | 作業開始の 14日前まで | 都道府県知事 (政令市等は市長) |
| 建築物解体等作業届 石綿則 第5条 | レベル2等の除去等 | 事業者 (施工者) | 作業開始前 | 労働基準監督署長 |
| 建設工事計画届 労働安全衛生法 第88条 | 耐火建築物・準耐火建築物での吹付け石綿の除去など | 事業者 (施工者) | 工事開始の 14日前まで | 労働基準監督署長 |
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※建設工事計画届を提出する場合は、石綿則第5条の建築物解体等作業届は不要です。
レベル3は届出不要でも、報告は必要
成形板や仕上塗材などのレベル3建材は、上の届出は必要ありません。ただし、事前調査・結果の報告・作業基準の順守はレベル3でも適用されます。
また、自治体によっては条例で独自の届出を定めています(例:東京都の石綿飛散防止方法等計画届)。元請業者は、工事の所在地の自治体のルールも確認してください。
08報告を怠るとどうなるのか?
結論報告しない・虚偽の報告をすると、大気汚染防止法により30万円以下の罰金の対象になります。
報告しない・虚偽の報告に対する罰則は、大防法に定められています。報告の前提となる事前調査を行わなかった場合は、別に労働安全衛生法の罰則の対象になります。
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 調査結果を報告しなかった・虚偽の報告をした | 大気汚染防止法 | 30万円以下の罰金 |
| 事前調査を行わずに解体・改修の作業を行った | 労働安全衛生法(石綿障害予防規則) | 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
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※2025年6月の刑法改正により、懲役は「拘禁刑」に改められています。このほか、飛散防止措置の違反に対する命令や罰則もあります。
罰則に加えて、報告漏れが見つかれば工事の進行や発注者との信頼関係にも影響します。そのため、元請業者は受注の段階で報告対象かどうかを判定し、工程に報告の期間を組み込んでおくことが最も確実な予防策です。
09まとめ
- 報告は、事前調査の結果を着手前に行政へ知らせる手続き。石綿の有無にかかわらず必要
- 対象は解体80㎡以上、改修・特定の工作物100万円以上(税込)、鋼製船舶20総トン以上のいずれか。分割契約は合算する
- 報告するのは元請業者で、期限は工事に着手する前まで。提出先は労働基準監督署と都道府県等
- 報告システムにGビズIDでログインして報告し、1回で両方に届く。件数が多ければプライムで一括申請
- 報告のあとも、発注者への書面での説明・現場への掲示・記録の3年保存が必要
- 報告対象外の工事でも、報告以外の義務(事前調査・記録・説明・掲示)は残る
- 報告と届出は別の手続き。報告しない・虚偽の報告は30万円以下の罰金の対象
報告制度を含む法改正の流れはアスベスト法改正のまとめで、調査を行う人の資格はアスベスト事前調査に必要な資格で確認できます。
Q&Aよくある質問
2006年9月1日以降に着工した建物でも、報告は必要ですか?
必要です。新築工事の着工日が2006年9月1日以降であることを設計図書等で確認すれば、その確認をもって事前調査とできます。ただし、調査が免除されるわけではないため、報告対象の工事であれば報告します。報告する項目は、04の「主な入力項目」の注記のとおり限られます。
分析せずに「みなし判定」にした建材は、どう報告しますか?
材料ごとの調査結果として、みなし判定である旨を報告します。みなし判定は分析を省けるだけで、扱いは「石綿あり」と同じです。そのため、報告のあとは作業計画の作成、必要な届出、飛散防止措置が必要になります。
建物の給排水や空調の配管を改修する場合、「特定の工作物」の工事になりますか?
なりません。建築物に設ける給排水・換気・冷暖房などの建築設備は、工作物ではなく「建築物」として扱います。そのため、建築物の改修の基準(請負金額100万円以上)で判断します。
電子ではなく紙で報告することはできますか?
報告は電子システムで行うのが原則です。ただし、電子での報告が難しい場合に備えて、石綿障害予防規則では所定の様式による報告書を提出する方法も認められています。紙で報告する場合の提出先や手続きは、所管の労働基準監督署・自治体に確認してください。
参考資料
- 石綿総合情報ポータルサイト(厚生労働省・環境省)
- 石綿事前調査結果報告システム(石綿総合情報ポータルサイト)
- 石綿障害予防規則(e-Gov法令検索)
- 石綿障害予防規則など関係法令について(厚生労働省)
- アスベスト(石綿)対策(環境省)
本記事は2026年9月時点の法令・公表資料をもとに作成しています。自治体によっては条例で独自の基準や手続きを定めている場合があります。実際の工事にあたっては、所管の労働基準監督署・自治体の最新情報をご確認ください。


